簿記3級の資格を取ろうと日々頑張っているみなさま。
かくいう自分も簿記勉強中です。
簿記を勉強する中で、つまずく論点のうちの一つ【現金過不足】
動画やブログ記事で解説しているものも多いですが、自分なりにもっとわかりやすく、
特に「なぜそうなるのか?」という理屈の面を重要視して解説していこうと思います。
プロフィール
44歳役者ではパッとせず、これからきちんと生きていくために簿記の勉強を始めた簿記初心者。
4日後に簿記3級の試験予定。
ちなみに過去問ではアベレージ95点をたたき出す。
40代の方でもわかる簿記に関する知識を、超絶わかりやすく、面白く解説していきます。
40代からの資格取得を目指す方への力になりたい!!!
目次
簿記3級。勘定科目【現金過不足】の三大原則
【現金過不足】という勘定科目には、絶対に知っておかなければいけない三大原則があります。
※ちなみに”三大原則”とは、自分が言っているだけですが、すごく大切なことです。
- 現金の値は、実際あり高を基準にする
- 【現金過不足】は”仮”の勘定科目である
- 【現金過不足】は一つとは限らない
それぞれ解説していきます。
【現金過不足】において、現金の値は”実際の現金あり高”を基準にする
【現金過不足】を使用する前に、最初に重要なのが
現金の値を操作するにあたり
”簿記上の現金”と”実際の現金あり高(例えば金庫に保管してある現金の金額)”のうちどちらを基準とするのか?
ではないでしょうか?
そのとおりなんですが、ではなんで実際あり高を基準にしないといけないのか?
これを解説している記事はあまりないようなので、自分が解説していきます。
ここ、自分はとても重要な論点な気がするので、わかりやすく語ります。
なんで現金の値は、簿記の現金ではなく、実際あり高を基準にするのか?
仮に簿記上の現金の値を基準にするとしたら、どうなるのか?
簿記を基準にすると、当然実際にある現金を足したり引いたりしないといけないということです。
自分のポケットマネーから出したり、金庫からお金を勝手に持ち出したりするということです。
なぜこれがダメなのか?理由は2つあります。
- 会社の信用を失う
- 現金の過不足の原因を見失ってしまう
ということです。
会社の信用を失う
昔バイトで飲食店に勤めていた時、レジ締めをしていました。
レジ締めってまれに現金が10円とか100円合わないことがあるのですが、これの原因を探すのが超めんどいんです。
だから、いいや自分のポケットマネーから足そう
とか
レジ横にある募金箱から、お金を出し引きしてゼロに合わせよう
とかやってしまうことがありました。
でもこれがいざ見つかってしまうと、銀行から「ほかの数値もごまかしているのでは?」と疑われてしまうようになります。
たった数円のことですが、その数円で信用を失うのです。
企業にとって信用を失うことはとんでもないリスクです。
だって、銀行からお金を借りれなくなるし、もしこれが株式会社なら、株主からも信用を失うことになります。株価の暴落につながるでしょう。
そもそもレジ締めが毎回毎回必ず±0になることはまずないはずです。(今は機械で管理しているお店が多いから、そうとも限らないが、人がかかわっている時点でミスは起きるものです)
原因がわからなければ、それでとりあえずはいいのです。
むしろ、現金を操作してごまかすほうが大問題なのです。
こちらのQ&Aも参考になります。
↓
現金の過不足の原因を見失ってしまう
もし仮に、実際現金あり高が50円少なかったとしましょう。
たった50円だし、自分の財布から出そう。
ということで、±0に調整します。
すると、ほかの人から簿記を見れば何の形跡もないので、何の問題もなかったと見えてしまいます。
これが大問題なのです。
後で、解説しますが、現金過不足になる要因は一つではない可能性があります。
費用を払ったり、利息を受け取ったり、売掛金を回収したり、それらの記入漏れが複数あった場合
その金額の差し引きでたまたま50円のマイナスになっている可能性だってあるのです。
もし、その記入漏れの仕訳の金額が大きかった場合どうなるのでしょうか?
売掛金回収が50,000で、消耗品費が50,050だったら…
自分が現金を財布から出して現金あり高を操作してしまったら、発覚したであろう問題が見つからずそのままになってしまう可能性だってあるのです。
当然これも会社の信用を失う行為だし、正しい財政状態、経営成績を表しているとは思えません。
だから、簿記の現金を差し引きして、実際の現金あり高に合わせて、相手方の勘定科目を【現金過不足】にするのです。
いわば、”あぁ現金の金額がなんかおかしいんだな”と誰でもわかるように付箋を打っていると同じことなのです。
付箋があれば、「あとでみんなで原因を探そう」
となるわけです。
では実際に【現金過不足】を設定してみましょう
問①
期中において簿記上の現金が、実際より500円多いことが分かった。原因がわからなかったのでとりあえず【現金過不足】として処理した。
簿記上の現金のほうが実際より500円多いので、実際の現金の金額に合わせるとすると
簿記の現金の値を500円分下げればいいので、借り方に現金が来ます。
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 |
現金 | 500 |
そして、その相手方の勘定科目が【現金過不足】になるので
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 |
現金過不足 | 500 | 現金 | 500 |
となります。
逆に簿記上の現金のほうが少なかった場合は、借方貸方が逆になります。
【現金過不足】は”仮”の勘定科目である
現金過不足は仮の勘定科目です。
仮とは?どういうこと?
仮とは、そのままの意味で、なぜ現金が過不足しているのか?原因がわからないので仮で【現金過不足】という勘定科目を置いておこう。
ということです。
だから、別に【現金過不足】でなくて、【何らかの理由で】という勘定科目でもいいし、【神の力】とかでも構わないとは思うんですけど、まぁ多分駄目でしょう。
簿記というのは世界共通のルールで、それが大事で大前提なので、そこは【現金過不足】に統一しましょうということです。
仮ということは、決算日には【現金過不足】を使って帳簿を締め切ってはいけないということです。
だからどうしても【現金過不足】の原因がわからないときは【雑損】【雑益】勘定科目に置き換えるのです。
【現金過不足】は一つとは限らない
前にも少し書きましたが、【現金過不足】になっている原因は一つではないということです。
例えば、消耗品費と受取手数料の分の仕訳を忘れていた場合、そのトータルで例えば500円分の差額が出ている
ということですな。
現金過不足問題の実際の解き方
基本的な問題から解いていきます。
①月末に金庫を確認したところ、紙幣が10,000、硬貨が5,800、だった。現金の帳簿残高は、16,000だった。不一致の原因を調べるも判明しなかったためとりあえず現金過不足で処理した。
現金過不足の問題の場合、実際の現金のあり高に現金帳簿残高を合わせないといけません。
実際の現金あり高は、15,800
現金の帳簿残高は、 16,000
つまり帳簿のほうが200多いので、現金勘定を貸方に200円分おけば、実際の現金あり高と同じになります。
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 |
現金 | 200 |
続いて、現金が200円分減った原因が不明なので、相手方に(この問題では借方に)【現金過不足】の勘定科目と貸方と同額の金額を入れます。
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 |
現金過不足 | 200 | 現金 | 200 |
これで仕訳は完了です。
コツとしては、
- 先に帳簿の現金を【現金】勘定科目を使って、実際の現金あり高に合わせる
- 相手方に【現金過不足】と同金額を書き入れる
この1が大切です。
それでは、次は少しひねった問題です。
②月末に金庫を調べたところ、紙幣が20,000、硬貨が4,300、お得意先の小切手10,000、受取手形5,000、郵便切手が500ありました。現金出納帳の残高は、32,000でした。原因がわからないので、現金過不足勘定で処理しました。
まず問題なのが、実際の現金あり高がいくらなのか?です。
問題文で【現金】で処理するの、
- 紙幣
- 硬貨
- 得意先の小切手(相手振出の小切手は現金と考える)
の3つだけです。他は関係ありません。
よって実際の現金あり高は”34,300”です。
現金出納帳(補助簿)のあり高が32000しかないので、実際あり高より2,300少ないです。
よって、実際の現金あり高に、帳簿残高を合わせるので、帳簿残高を2,300増やさないといけません。
つまり現金の勘定科目は借方に来ます
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 |
現金 | 2,300 |
そして、相手方の勘定科目を”現金過不足”で”同じ金額”を書き込みます
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 |
現金 | 2,300 | 現金過不足 | 2,300 |
です。
これで仕訳の終了です。
続きまして、現金過不足の原因が分かった場合の仕訳問題。
③借方に計上していた現金過不足2,000の原因が、旅費交通費3,000と受取利息1,000の記入漏れと判明した。
解き方としては、最初に現金過不足の仕訳をどうやったかを考えます。
問題文では”借方に現金過不足を2,000していた”
とあります。つまり
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 |
現金過不足 | 2,000 | 現金 | 2,000 |
ですね。
帳簿上の現金が、実際の現金あり高より、2,000多かったということ(帳簿より現金が少なかった)です。
そのため、帳簿の現金を2,000減らして(貸方に持ってくる)でその現金がマイナスになった原因が不明なので、借方に現金過不足をもってきて処理したのです。
この借方の現金過不足の原因がわかったので、現金過不足を0にしないといけないので、貸方に現金過不足を持ってきます。
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 |
現金過不足 | 2,000 |
これに、現金過不足の要因である勘定科目、旅費交通費と受取利息を加えると、
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 |
旅費交通費 | 3,000 | 現金過不足 | 2,000 |
受取利息 | 1,000 |
これが正解の仕訳です。
もし、この2つの仕訳を忘れていなかったとしたら、
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 |
旅費交通費 | 3,000 | 現金 | 3,000 |
と
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 |
現金 | 1,000 | 受取利息 | 1,000 |
という仕訳をしていたということです。
つまりこの2つの仕訳をしていなかったために、実際の現金あり高だけがトータルで2,000円分減っていたわけです。
これで現金過不足の問題は終わりです
…というわけにはいきませんよね。
現金過不足は仮の勘定科目なので、決算日には別の勘定科目に置き換えないといけません。
それが、【雑益(雑収益)】【雑損(雑損失)】です。
では③の問題を応用して次の問題を解きましょう。
④借方に計上していた現金過不足2,000の原因を決算日に改めて調査したところ、旅費交通費3,000と受取利息1,800の記入漏れだった。処理後の残高は原因が不明だったので雑益または雑損で処理した。
③と同じように、借方にある現金過不足を0クリアするために、貸方に2,000、そして、原因の分かった、旅費交通費と受取利息を仕訳します。
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 |
旅費交通費 | 3,000 | 現金過不足 | 2,000 |
受取利息 | 1,800 |
今回は、借方と貸方の合計の差は、貸方が800多い。
これは何を意味するかというと、忘れていた仕訳を加えても、やはりトータルで帳簿の現金残高より実際の現金残高が800円分少ないということです。(だから帳簿の現金を減らすために、貸方に800残っている)
でその800円分現金が減っている原因不明なので、借方に800
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 |
旅費交通費 | 3,000 | 現金過不足 | 2,000 |
800 | 受取利息 | 1,800 |
貸借を0にするために借方に800仕訳して、その勘定科目が不明だが借方にあるので費用勘定。
つまり【雑損】の勘定科目が入ります。
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 |
旅費交通費 | 3,000 | 現金過不足 | 2,000 |
雑損 | 800 | 受取利息 | 1,800 |
現金が何かしらの理由で、800円分出て行ったということ
※ここで、さらにちょっと複雑な問題があったので、紹介します。
⑤決算日において、現金過不足(不足額)¥1,220の原因を調査すると、¥1,800の切手購入と、受取手数料¥600の記入漏れが発覚。残りの差額は原因不明なので、適切な処理をする。
”現金過不足(不足額)¥1,220”が難しいですよね。
不足額というのは、帳簿の金額より実際あり高が少ない(不足している)という意味です。
帳簿の金額を基準にして、現金あり高を不足と表現しているのがやらしいですよね。
つまり、帳簿の現金>実際の現金あり高
だから帳簿の現金を、実際の現金あり高に合わせて減らす仕訳を【現金過不足】勘定を用いて仕訳していたということ。
貸方に現金勘定を持ってきます。
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 |
現金過不足 | 1,220 | 現金 | 1,220 |
です。
これを基にして、忘れていた切手購入代金と受取手数料の仕訳するので
まず、現金過不足を0クリアするので、貸方に現金過不足を持ってきます。
そして、現金過不足になった原因の通信費と受取手数料を書くと
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 |
通信費 | 1,800 | 現金過不足 | 1,220 |
受取手数料 | 600 |
差額は貸方が20多いので
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 |
通信費 | 1,800 | 現金過不足 | 1,220 |
雑損 | 20 | 受取手数料 | 600 |
が答えになります。